【映画沼 第3回】2017年の映画を振り返る・後編
- 大江
- 2018年2月16日
- 読了時間: 10分
前編はこちら
2018年も2月に突入いたしましたが
引き続き2017年を振り返っていきます
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6.人類遺産

驚きの静かさ:☆☆☆☆☆
睡眠導入度 :☆☆☆☆☆
無我の境地 :☆☆☆☆☆
予告編
内容
約30年前の大雨で湖底に水没し、近年の干ばつによって奇跡的にその全貌を現わしたヴィラ・エペクエン(アルゼンチン)の町並み。アメリカ・ニュージャージー州の海上遊園地を襲ったハリケーンにより、海へと崩落した巨大なローラーコースター。そして、日本の高度成長期を支え、最盛期には5000人以上が生活していた炭鉱の島・端島(軍艦島)の鉄骨アパートの部屋では、時を止めたカレンダーが風に揺れている―。誰もいない廃墟の風景に、まるでその場にいるかのような臨場感と不思議な生命力さえも感じさせられる。
私たちが見ている光景は過去の産物なのか? それともこれが未来の世界なのか? そもそも人類がこの地球に存在する意味とは何なのか? “棄てられた風景”が、今静かに語りかけてくる―
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〈バーとかでずっと流しててほしい映画オブザイヤー〉
ドキュメンタリーから一本
硬派な映画です
映画界の「粉落とし」
下手したらお腹をこわしてしまうおそれあり
なにせカメラは固定で音楽もナレーションも字幕もなく
ただただただただ世界中の廃墟が映し出されるだけ
そんなものおもしろいのか?
お答えしましょう
よくわかりません
見ている間いろんなことを考えます
きれいだな
不気味だな
なんの施設だろう
などという表面的なところからはじまって
廃墟とは
人間とは
時間とは
とだんだん思考が迷宮入りしていきます
見れども見れども映されるのは廃墟のみ(超高画質)
聞こえてくるのは風と雨と鳥の羽ばたきの音くらい(超高音質)
頭はがんばって「意味」をいろいろ考え続けます
そういう状態が続くとどうなるかご存知でしょうか?
寝ます
静かにパニくった脳みそはゆるやかに昇天していきます
リカイフノウ…リカイフノウ…リ…カイ…フ……ZZZZZ
しかしこの映画の注目すべきところはその後です
再び起きた時あなたは不思議なことに気づくでしょう
目の前の廃墟に対してむやみに頭が働かなくなり
見たまんま聞いたまんまをただ受け止めることができるようになります
こだわりとか欲とかいったものが消えてしまったような
予想外の癒しとデトックス効果
映画が終わって外に出てみるとそこには渋谷の喧騒が広がっていましたが
なんか一段高いところから俯瞰して見ているような感覚
我欲や我執から解き放たれ心が広くなったような気分でした
人間何するものぞ
とどのつまり行きつく先は寂寞荒涼たるあの「廃墟」世界なり
なかなか他では味わえない不思議な映画体験でした
ちなみにその後いい気になって酒飲んで蕎麦食ったらあっという間に俗な自分に戻りました
めでたしめでたし
同じ監督の「いのちの食べ方」も傑作
こっちは「生き物」が「食べ物」になる過程が延々映されてます
公式サイト
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7.メッセージ

映像イメージの壮大さ :☆☆☆☆☆
SF的センスワンダー :☆☆☆☆☆
日本人に親しみやすい形度:☆☆☆☆☆
予告編
あらすじ
突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。
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〈彼方より飛来した米菓〉
ある日突然謎の巨大な物体が地球のいろんな場所の上空に出現
日本にも現れたその物体をみて日本人は思いました
でかいばかうけが空に浮いている
そんなばかうけ型宇宙船を地球に出現させた宇宙生物ヘクタポッド
彼らが人類に向けて発したメッセージとは…
言葉と思考、そして時間
人類の使う言葉の不完全さ不自由さ
言葉が氾濫している今の世の中にこそ考えるべきテーマが含まれています
監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ
すごく言いたくなる名前の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
ドゥニ氏の作品は去年『ブレードランナー2049』も公開されましたが
残念ながらこっちは名作の続編ということもあったからか
やや肩ひじ張りすぎて空振りしている感が無きにしも非ずでした
しかし本作はばっちりジャストミート
主人公の勤める大学キャンパス上空を横切るジェット機
ばかうけに接近していくヘリコプターの空撮
宇宙船内でのヘクタポッドとの接触の一部始終
などなどドゥニドゥニの映像センスをいかんなく堪能できるでしょう
切ない人間模様
緊迫した状況の連続
さらに心地よいどんでん返しもあり飽きさせません
SF映画を見てる!
という感動に酔いしれること受けあいです
公式サイト
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8.パターソン

ゆとりのある生活 :☆☆☆☆☆
くすくす笑い :☆☆☆☆☆
やさしさに包まれたなら:☆☆☆☆☆
予告編
あらすじ
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラにキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に芽生える詩を秘密のノートに書きとめていく。帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。そんな一見変わりのない毎日。パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。
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〈愛おしい映画〉
パターソンに住むバス運転手にしてアマチュア詩人のパターソンさんの1週間
非日常なドラマは特に起きません
でも確かにそこに息づく人たちが存在し関係している
それだけでこんなにもおもしろい
なんでもない日常なんてないと気づかさせてくれる
そんな映画を作ってしまう名匠ジム・ジャームッシュ
彼も間違いなく世界の芯の部分をすくい取ってみせてくれる詩人の一人でしょう
鼻腔をくすぐるようなささやかなユーモア
いろいろ挑戦したがるお嫁さん
バスのお客さんたちの会話
やたら出会う双子
町中の詩人たち
この映画にはやさしい空気が充満しています
パターソン役は今のスターウォーズのカイロ・レン役でおなじみアダム・ドライバー
煽り耐性0の中二病なカイロ・レンに対してゆとりある大人のパターソン
パターソンだったらあんな宇宙戦争さっさと終わってるのに
なんていらん想像で遊んでみるのもいいでしょう
いつまでも終わらないでほしい
心からそう思える映画です
公式サイト
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9.勝手にふるえてろ

こじらせ女子度 :☆☆☆☆☆
反リア充ラブコメ:☆☆☆☆☆
松岡茉優 :☆×5億個
予告編
あらすじ
私には彼氏が2人いる──突然告白してきた暑苦しい同期のニと中学時代からの片思いの相手イチ。 「人生初告られた!」とテンションがあがるも、イマイチ、ニとの関係に乗り切れないヨシカ。一方で、「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこうと思ったんです」という奇妙な動機から、中学時代からひきずっていた片思いの相手・イチに会ってみようと、ありえない嘘をついて同窓会を計画。ついに再会の日が訪れるのだが・・・。 “脳内の片思い”と“リアルな恋愛”。同時進行で進むふたつの恋の行方は?
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〈2017年ベスト邦画〉
まぁ、その…なんていうか…あーえっと…うん
松岡茉優がすっっげぇかわいい
以上
で終わらしたいくらい松岡茉優が無双している映画
2017年の邦画は個人的には惜しい作品が多かったんですが
年末にこの映画がそのモヤモヤを一気に払ってくれました
それくらい勢いのある映画で
2月17日現在いまだに劇場でやっていることからもそれがわかります
アンモナイトの化石を買い
空耳アワーをヘッドホンで聞き
隙あれば妄想してしまう
そんな女性はいかがでしょう
こじらせて引きこもって暴走して
つらかったりイタかったりな部分もありますが
小気味いいテンポで振り回してくれます
素朴で間抜けな同僚役の渡辺大知(黒猫チェルシー)も相変わらずいい味してます
ま、結局顔だけどな!
公式サイト
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10.花筐

めくるめく虚構:☆☆☆☆☆
パンクな映像 :☆☆☆☆☆
血と青春 :☆☆☆☆☆
予告編
あらすじ
1941年の春、アムステルダムに住む両親の元を離れ、佐賀県唐津に暮らす叔母の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦の新学期は、アポロ神のように雄々しい鵜飼、虚無僧のような吉良、お調子者の阿蘇ら学友を得て“勇気を試す冒険”に興じる日々。肺病を患う従妹の美那に恋心を抱きながらも、女友達のあきねや千歳と“不良”なる青春を謳歌している。しかし、我が「生」を自分の意志で生きようとする彼らの純粋で自由な荒ぶる青春のときは儚く、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。「殺されないぞ、戦争なんかに!」・・・俊彦はひとり、仲間たちの間を浮き草のように漂いながら、自らの魂に火をつけようとするが……。
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〈ワンダーランド戦中日本〉
大林宣彦監督といえば
『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』
の尾道三部作を思い浮かべる人が多いと思います
そんな監督が戦争三部作として
『この空の花』『野のなななのか』に続く最終作として発表したのが
この『花筐』です
御年80歳
さらに現在がん闘病中
果たしてどんな作品なのかというと
どパンクでした
「ど」がつくパンクです
前2作もとんでもない映画でしたがそれに勝るとも劣らない
無比の瑞々しさとオリジナリティ
大林宣彦おそるべし!
何を書いたらこの無茶苦茶さが伝わるかわからないんですが
この物語の主人公たちは17歳の少年少女です







17歳の少年少女…?
少女の方はまあよかろう
少年と言われるみなさん身分証の提示をお願いいたします
なんと俳優の実年齢で20歳~42歳の開きのある17歳たち
これをさもあたりまえに同フレームにおさめてしまう力技
これは一つの例ですが
とにかくこの映画全面が虚構で覆われているんです
作られた劇、作られた人物、作られた舞台
ロケーションこそ唐津で行われていますが現実の唐津ではありえません
月は異様に照り映え
合成の桜吹雪が舞う
ファンタジーでワンダーランドです
しかしその中でこそ浮かび上がる真実のことばや心がある
そうこの映画は教えてくれます
腐る一歩手前の熟しきったロマンチシズム
これが大林映画の特徴ですが
一層その魂は青臭さを増しているようにも感じます
恐るべし!
公式サイト
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ここまで行き当たりばったりで10本紹介してきましたが
実はまだまだ紹介したい映画がありまして…
スイスアーミーマンなんかやってる場合じゃなかった
すいません!
次は武士沢レシーブ最終回ばりに凝縮しますので許してください!
というわけでもうちっとだけ続くんじゃ

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